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「なじょもん」へ


なじょもん「農と縄文の体験実習館
      
                          2013年05月08日 斎藤 眞理                                  
 織り人の私は、糸、紐、布、織物それに関することがあれば何処へでも出かけます。今回は新潟県津南町の「なじょもん」(農と縄文体験実習館)へ行ってきました。一年前に94才で亡くなった滝沢秀一追悼企画展が開催されているので、是非見たかったのです。「編み技術の民俗〜アンギンと蓑〜」というテーマの展示会でした。


 滝沢秀一は津南町出身で満州から引き上げ、故郷の社会教育業務に携わり、津南町歴史民俗資料館開館に尽力しました。妻有(十日町市から津南町にかけての地域)の民俗調査を行い、伝統的な技術や知恵の残る秋山郷を中心に、民具の収拾、整理、調査、研究を行いました。集めた民具の多くは国重要文化財となっています。特に、アンギン技術を発見、復元した業績は高く評価されています。また、ワラの編み技術についても研究しています。

 会場での蓑とゴウギの展示は圧巻でした。蓑はミヤマカンスゲ(ヒロロ)とヌイゴを使い編み方は何種類も組み合わせて仕上げられていました。エジプトのファラオの胸当てやインカの羽飾りを思わせる豪華な蓑には圧倒されました。ゴウギはワラで編まれており、重い荷物を背負うときに利用したものです。ヒモゴは田や畑の草取りのとき日除けとして背中に着るコモのことです。

 滝沢秀一のアンギン研究は、カラムシの栽培、刈取り、糸より、アンギン編みと一連の実験と体験を重ねることによって、アンギンの解明を成し遂げました。
『山野に自生する植物繊維を採取して、これも手づくりの工具で自ら編み、仕事着として明治末期まで庶民の暮らしの中に位置づいていた布がアンギンである。草皮または樹皮などに含まれる繊維を、俵や菰などを編むのと同系の用具、技法で編み上げた編み布である。少なくとも日本においては織機による織物が入る以前から作られ、着衣に用いられたことが縄文時代遺跡からの出土によって証明されている』と滝沢秀一は説明しています。

 「なじょもん」の後は、津南町歴史民俗資料館に行き、豪雪地帯の民具の数々を見ました。雪中での運搬に必要な道具、狩りの道具など平地では見ることのできない頑丈で重厚な道具は、鈴木牧之の「北越雪譜」の世界でした。ここでもアンギンの手づくり工具が展示されており、私には芸術作品として目に入りました。

注:「なじょもん」とは、津南方言の「なじょも」と「縄文」を組み合わせて作られた造語です。「なじょも」とは「是非何々して」をさらに丁寧にした言葉で、『なじょも来てくんねかい』(是非来て下さい)という意味を込めた言葉だそうです。 


アンギンの着衣

アンギン編み機


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